言うことに意味がある。

 ☆ロケで拾った日本語【ありがとうございます。】



オットットの京都みやげ、漬物各種。
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ウリもあります。
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ありがとう。
(冷酒に合うのよ♪)


ウリ
なんか、
ウリ猫にはちっともうれしくないけれど。

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ドラマのロケ現場で拾った日本語#3は、
 「ありがとうございます。」です。(↓)

***

撮影隊に同行した2週間、
ものすごくたくさん「ありがとうございます。」を言われました。

方言指導というおしごとをいただいて参加したのですから、
ドライやテストのたび、耳をそばだてて役者さんにまとわりつき、
気がついたことがあれば、指摘します。

いや、指摘する前に、演技との兼ね合いもありますから、
指摘してよいものかどうか、まずは監督さんの判断を仰ぎます。
「すぐに役者さんに言って直してください。」と言われれば、
そのようにします。
するとかならず、「ありがとうございます。」と言われます。

「それは今は見逃してください。」と言われることもあります。
そんな場合も、かならず、「ありがとうございます。」が付きます。

方言の問題以外でも、もし気づいてしまったことがあれば、
一応、それも進言します。
言った瞬間、あ、今のはよけいな口出しだったな、と感じる内容のときでも、
それでもかならず、「ありがとうございます。」と言われます。

ふだんの身の回りの日本語生活だったら、
「すみません。」とか「あ、どーも。」で済ませるような場合でもです。
さらには、「あー、はいはい。」とか、
「あー、はいはいはいはい(んなこたぁ、わかってますよ)。」とか、
さらにあるいは、への字の口で軽くうなずくだけのような場合ですら、
きちんと、はっきりと、「ありがとうございます。」が返って来る。



初めのうちは、なんて礼儀正しいんだろう、と思いました。
「んなことぁ、わかってますよ。」的なことを言ってしまった場面では、
むしろ軽く傷ついてしまうような気さえしました。

でも何十回も言われるうちに、うっすらとわかってきました。
この現場でのアリガトウには、

 ①あなたから聞いたことを私は了解した。
 ②私はあなたに感謝する。
 ③感謝していることを私はあなたに伝える。

この3つが含まれているんだな、って。

だから黙ってうなずくだけじゃだめだし、
曖昧な「あ、どーも。」も、だめなんだな、って。



ロケ最終日、主だった役者さんに花束が渡されるセレモニーのとき、
松尾スズキさんが、あいさつなさった中で、
「怒鳴り声が響くようなこともなく、いい現場でした。」
という意味のことをおっしゃいました。

察するに、怒鳴り声が響くような現場もある、ということなのでしょう。
実際、急な雷雨だとか、ちょっとした行き違いがもとで、番狂わせがあり、
危機的な、いわゆる「テンパった」状態になった日もありましたが、
そんなときも、心が冷えるようなことばが飛び交うことはありませんでした。

上の①と②があっても、③が欠けたがために、
小さな不快感が生まれ、それがいくつか重なることによって
あちこちでギスギスした空気が生まれ、それがふとしたことで暴発する、
――などということは、大いにありそうです。

でも、そうはならなかった。
ピリピリはしても、ギリギリのところで礼儀正しさが保たれていた。

それって、あんがい難しいことだし、とてもたいせつなこと。
ただでさえドギマギ緊張しまくりだったド素人のわたしが、
そんな殺伐とした現場に放り込まれなくて、よかったです。
どんなピンチでも紳士淑女だったスタッフのみなさんに、感謝します。


ありがとうございました!←③

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コメント

当たり前だけど撮影現場も一般社会も同じなんですね、物事を無事に運ぶために欠かせないことは。 言葉は使い方が大事、伝えるための符丁が業界用語だとしても、気持ちがやっぱり大事。 
むむ、ドラマの放映が待ち遠しくなってきました!

  • おっチョコ
  • 2015/09/21 19:03


◆おっチョコさん、コメントをありがとうございました。
 言いたいことをうまく伝えられたかどうか不安だったのですが、
 つまり「形だけのアリガトウ」にも意味はある、大いにある、
 ということを言いたかったのでした。
 ええと、つまり、形だけでも言うためには、気持ちが要りますもんね。
 受け止めてくださって、ありがとうございます。

  • ニャンタのおば
  • 2015/09/22 19:11