2015.09.21 Monday
言うことに意味がある。
***
撮影隊に同行した2週間、
ものすごくたくさん「ありがとうございます。」を言われました。
方言指導というおしごとをいただいて参加したのですから、
ドライやテストのたび、耳をそばだてて役者さんにまとわりつき、
気がついたことがあれば、指摘します。
いや、指摘する前に、演技との兼ね合いもありますから、
指摘してよいものかどうか、まずは監督さんの判断を仰ぎます。
「すぐに役者さんに言って直してください。」と言われれば、
そのようにします。
するとかならず、「ありがとうございます。」と言われます。
「それは今は見逃してください。」と言われることもあります。
そんな場合も、かならず、「ありがとうございます。」が付きます。
方言の問題以外でも、もし気づいてしまったことがあれば、
一応、それも進言します。
言った瞬間、あ、今のはよけいな口出しだったな、と感じる内容のときでも、
それでもかならず、「ありがとうございます。」と言われます。
ふだんの身の回りの日本語生活だったら、
「すみません。」とか「あ、どーも。」で済ませるような場合でもです。
さらには、「あー、はいはい。」とか、
「あー、はいはいはいはい(んなこたぁ、わかってますよ)。」とか、
さらにあるいは、への字の口で軽くうなずくだけのような場合ですら、
きちんと、はっきりと、「ありがとうございます。」が返って来る。
*
初めのうちは、なんて礼儀正しいんだろう、と思いました。
「んなことぁ、わかってますよ。」的なことを言ってしまった場面では、
むしろ軽く傷ついてしまうような気さえしました。
でも何十回も言われるうちに、うっすらとわかってきました。
この現場でのアリガトウには、
①あなたから聞いたことを私は了解した。
②私はあなたに感謝する。
③感謝していることを私はあなたに伝える。
この3つが含まれているんだな、って。
だから黙ってうなずくだけじゃだめだし、
曖昧な「あ、どーも。」も、だめなんだな、って。
*
ロケ最終日、主だった役者さんに花束が渡されるセレモニーのとき、
松尾スズキさんが、あいさつなさった中で、
「怒鳴り声が響くようなこともなく、いい現場でした。」
という意味のことをおっしゃいました。
察するに、怒鳴り声が響くような現場もある、ということなのでしょう。
実際、急な雷雨だとか、ちょっとした行き違いがもとで、番狂わせがあり、
危機的な、いわゆる「テンパった」状態になった日もありましたが、
そんなときも、心が冷えるようなことばが飛び交うことはありませんでした。
上の①と②があっても、③が欠けたがために、
小さな不快感が生まれ、それがいくつか重なることによって
あちこちでギスギスした空気が生まれ、それがふとしたことで暴発する、
――などということは、大いにありそうです。
でも、そうはならなかった。
ピリピリはしても、ギリギリのところで礼儀正しさが保たれていた。
それって、あんがい難しいことだし、とてもたいせつなこと。
ただでさえドギマギ緊張しまくりだったド素人のわたしが、
そんな殺伐とした現場に放り込まれなくて、よかったです。
どんなピンチでも紳士淑女だったスタッフのみなさんに、感謝します。
撮影隊に同行した2週間、
ものすごくたくさん「ありがとうございます。」を言われました。
方言指導というおしごとをいただいて参加したのですから、
ドライやテストのたび、耳をそばだてて役者さんにまとわりつき、
気がついたことがあれば、指摘します。
いや、指摘する前に、演技との兼ね合いもありますから、
指摘してよいものかどうか、まずは監督さんの判断を仰ぎます。
「すぐに役者さんに言って直してください。」と言われれば、
そのようにします。
するとかならず、「ありがとうございます。」と言われます。
「それは今は見逃してください。」と言われることもあります。
そんな場合も、かならず、「ありがとうございます。」が付きます。
方言の問題以外でも、もし気づいてしまったことがあれば、
一応、それも進言します。
言った瞬間、あ、今のはよけいな口出しだったな、と感じる内容のときでも、
それでもかならず、「ありがとうございます。」と言われます。
ふだんの身の回りの日本語生活だったら、
「すみません。」とか「あ、どーも。」で済ませるような場合でもです。
さらには、「あー、はいはい。」とか、
「あー、はいはいはいはい(んなこたぁ、わかってますよ)。」とか、
さらにあるいは、への字の口で軽くうなずくだけのような場合ですら、
きちんと、はっきりと、「ありがとうございます。」が返って来る。
*
初めのうちは、なんて礼儀正しいんだろう、と思いました。
「んなことぁ、わかってますよ。」的なことを言ってしまった場面では、
むしろ軽く傷ついてしまうような気さえしました。
でも何十回も言われるうちに、うっすらとわかってきました。
この現場でのアリガトウには、
①あなたから聞いたことを私は了解した。
②私はあなたに感謝する。
③感謝していることを私はあなたに伝える。
この3つが含まれているんだな、って。
だから黙ってうなずくだけじゃだめだし、
曖昧な「あ、どーも。」も、だめなんだな、って。
*
ロケ最終日、主だった役者さんに花束が渡されるセレモニーのとき、
松尾スズキさんが、あいさつなさった中で、
「怒鳴り声が響くようなこともなく、いい現場でした。」
という意味のことをおっしゃいました。
察するに、怒鳴り声が響くような現場もある、ということなのでしょう。
実際、急な雷雨だとか、ちょっとした行き違いがもとで、番狂わせがあり、
危機的な、いわゆる「テンパった」状態になった日もありましたが、
そんなときも、心が冷えるようなことばが飛び交うことはありませんでした。
上の①と②があっても、③が欠けたがために、
小さな不快感が生まれ、それがいくつか重なることによって
あちこちでギスギスした空気が生まれ、それがふとしたことで暴発する、
――などということは、大いにありそうです。
でも、そうはならなかった。
ピリピリはしても、ギリギリのところで礼儀正しさが保たれていた。
それって、あんがい難しいことだし、とてもたいせつなこと。
ただでさえドギマギ緊張しまくりだったド素人のわたしが、
そんな殺伐とした現場に放り込まれなくて、よかったです。
どんなピンチでも紳士淑女だったスタッフのみなさんに、感謝します。
ありがとうございました!←③
コメント
◆おっチョコさん、コメントをありがとうございました。
言いたいことをうまく伝えられたかどうか不安だったのですが、
つまり「形だけのアリガトウ」にも意味はある、大いにある、
ということを言いたかったのでした。
ええと、つまり、形だけでも言うためには、気持ちが要りますもんね。
受け止めてくださって、ありがとうございます。
- ニャンタのおば
- 2015/09/22 19:11
当たり前だけど撮影現場も一般社会も同じなんですね、物事を無事に運ぶために欠かせないことは。 言葉は使い方が大事、伝えるための符丁が業界用語だとしても、気持ちがやっぱり大事。
むむ、ドラマの放映が待ち遠しくなってきました!